[コメント] ニューヨーク、アイラブユー(2008/米=仏)
抜きんでて良いというのも悪目立ちもない、しかしそれでいて平凡ではなく安定した映画力を見せているGOODオムニバス映画
オムニバス映画にありがちな、明らかに力量の差が垣間見えてしまい鼻白むという作品のボディは本作にはない。多様な物語、多彩な語り口を一本の映画にまとめ上げるトータルコンセプトは企画推進者の勝利と言える。この映画は人種の坩堝といわれるニューヨークそのものであるかのような映画だ。本作で最も画面が輝くのは、ファティ・アキンの挿話である。スー・チーの表情に吸い寄せられるウグル・ユーセルの心情は、国境や人種を越えた愛を情熱的に描くことで知られるアキンの心情そのものであるかのようにリアルな抒情を湛えている。ユーセル、スー・チーの映画的身ぶりがまた泣かせる。スー・チーのノースフェイスのダウンジャケットもまた泣かせる。一見して、中国人というマイノリティに寄せるキナ臭いシンパシーものかと思いきや、そうした危うさを遥かに飛び越えた美しさが息づいていた。この映画は故アンソニー・ミンゲラに捧げられている。ミンゲラといえば、やはり国境を超える人間の生きざまを緻密に描く作風で知られるが、それはやはり、ニューヨークという文化が混然一体となった都市生活と結びついている。境界なき愛。このテーマが、映画の舞台設定、登場人物の交錯、人種の様々を通してこの映画に貫かれている。非常にコンセプチュアルな作品であったといえよう。丹念な映画作りに呼応した各国の才能。ミンゲラのような深さを描く、今度はその一作で証明してほしい。
(評価:)
投票
| このコメントを気に入った人達 (2 人) | [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。