[コメント] ハート・ロッカー(2008/米)
戦場は人間のエモーショナルな側面がもっとも剥き出しにさせられる場だと言うのに、かくもドラマに富んだステージで、戦争映画マニアしか楽しめない作品を作ってしまう作家性というのは正直恥ずかしい。ストーリーらしきものは二の次のこの話を、爆風に吹き飛ばされるシーンの迫力のみで繋ぐ撮り方は心底下世話としか思えなかった。
自分も含めて、アカデミー賞というものの愚劣さを広く世間に知らしめたという意味においては、価値ある作品といえるものなのかもしれない。しかし俗流映画と呼ばれる作品にもそれはそれなりのテクニックが必要とされるし、その意味では前述の言い方はエンターテイメントに徹した戦争映画には失礼だったろう。それらの名誉のために言えば、擬似ドキュメントを衒うことで意味ある映画を装うこの愚作よりは、名誉に恵まれなかった正統派戦争娯楽作品は山ほどある。何も戦争ジャンキーを描くのが悪いとか、反戦思想が見られないから悪いといっているのではさらさらない。つまらない。この一語に尽きるのだ。いっそ対抗作品に学んで3D映画にでもしたらもっと儲けられるぜ、と憎まれ口の一つも叩きたくなる出来であった。俗流似非ドキュメントがこれ以上増殖していかないことを心から願う。
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