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[コメント] ハート・ロッカー(2008/米)

案外女脳の作品なのかも。正直あんまり「ちむどんどん」しなかった。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







戦場の、とりわけ、爆弾処理という任務の、極限の緊張感に取り憑かれた男の話。戦場は麻薬である、という冒頭の一文ですべて語れる。

一般的に(あくまで一般的に)男は女の話を聞いていると、起こったことのディテールを時々の感情を織り込みつつ時系列で長々いつまでも終わりがみえないその話に、つい「で、どうなったの?」「結局何が言いたいんだ?」と口をはさみたくなる(そのプロセスが面白ければ聞いていられるのだが)。おおむね男脳は「見通し」を求めるようにできている。一方で男からそう口をはさまれると「何が言いたいかって?だから今話したままよ」となる。女脳は共感を求めるようにできている。そう考えるとこの作品、一見ハードなミリタリーもので女性監督ときくとちょっと驚くが、何より女性的なのかもな、とも思ったり。ああ、イラク? ほこりっぽいよね、現地の人って、顔の区別なんか全然つかないし、なんかずっとこっち見てない? 機械なんかよりも結局は手でやらないとできないし、あ〜、わかるわかる、すっごい緊張するんだけど、それが病みつきになっちゃうんだよね。あ〜、わかるわかる。という映画で、「で、男はどうなったの?」と問うてはいけない性質の話なのだろう。

男脳が納得しやすいのはこういう話だろう。別の部隊からやってきた男は爆弾処理のプロ中のプロ。怖いもの知らずで「どうして」怖くないのかと思って見ていたら、やつは恐怖に取り憑かれていたジャンキー「だったのだ」とか、男はいつの間にか恐怖に支配されていたジャンキーになってしまった、戦争というのはそうやって人間の精神を麻薬のように蝕む「ものなのだ」というような物語構造なのだろう。

タイトルは、ハートがロックする=心臓がバクバクする、のことだと思っていたら、ハートはhurtだし、ロックもlockのほうだった。正直あんまりハラハラしなかったのは、中盤の主人公の爆破処理の場面では、爆破は起こらない、ことが見通せるからだったように思う。中盤までの爆弾解体ミッションはすべて成功することが予見される。なぜなら爆弾処理という場面は、爆発したらそこで物語が終了になることがわかるからだ。だから途中で狙撃手同士の対決場面や、あるいは、爆弾解体処理中に襲撃されるとかいう要素に頼らざるを得ない。爆弾の爆発は、007でもスパイ大作戦でもクライマックスにしかもってこられないハラハラ場面なのだ。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)ぽんしゅう[*] けにろん[*] 水那岐[*]

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