むしろ好きなタイプの映画ではあるのだ。そうでなければリクエストなどするわけがない。しかし疲れが溜まって瞳を閉じてしまった箇所が幾度もあるにもかかわらず、自分はこの映画で筋が判らなくなって困惑することはなかった。

正直、ラストのチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲への音楽的感動しか、この映画で胸を打った場面はない。しかし内容は既視感に満ち溢れているので、見返す気力もない。好きなタイプの映画をそんなふうにしか語れない自分に嫌気がさし、もう映画評を書くのはやめたほうがいいか、と思って数週間が過ぎた。しかし気がついた。総てのシーンは美味しいところを予告編で見せられてしまったのだ、実に腹立たしいことに！

予告編には気を遣ってくれねば困る。とんでもないラストへ向けて物語は人々の思いを巻き込んで突っ切っているのに、そのとんでもなさが最初から見せられてしまったのではどうしようもない。鮮度が大事なこの手の映画なのだからこそ、一期一会だけの喜びを観客に与えることこそが映画会社の勤めと思えるのだが、どんなものだろうか。