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[コメント] 春との旅(2009/日)

地味な物語と、全身をフレームに入れたロングショットのおとなしい構図が大半だからこそ、粒よりの役者たちの人生の「味」が存分に堪能できる。出会いと別れの妙をしっとり感じさせる、ロードームービーの秀作。
シーチキン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







日本にもまだこれだけの名優たちが残っていたかと、少し嬉しい気持ちにさせてくれる。

仲代達矢大滝秀治田中裕子(不幸せ感ただよう色気があったなあ)、淡島千景柄本明などなど。短い映画の中であるにもかかわらず、それぞれの数十年に及ぶ「人生」を感じさせ、しかもその役者の人間性そのものを発露しているのではないかと錯覚させるほどの名演だった。

何よりそれぞれの登場人物たちの関係をくどくど説明することをせずに、何気ない仕草や、台詞というよりも発声、声かけや話しぶりで表していく。まさに映画の醍醐味を味あわせるだけの力量を持った名役者たちの存在感が良かった。

本作はロングショットを中心とした構図が多用された。仲代達矢と徳永えりが、色んなシーンで、時に一緒に、時に追いかけて歩く姿が繰り返し出てきた。

不自由な足ながらもいかつく歩く仲代の姿と、ややがに股気味に両足を踏んばっているかのように歩く徳永の姿は、何だかほほえましいくらいに似た雰囲気があって、それをみているだけで、「ああ、祖父さんとその孫娘か」と感じさせた。

最後、その二人が並んでそばを食べるシーンで、ようやく二人の顔のアップが入る。そこでのやりとりは印象的だった。

祖父さんとその兄弟たちとの出会いと別れを間近に見てきた春は、、「やっぱりじいちゃんと暮らしていきたい」と、そう心に決めたのかな感じさせる良いシーンだった。

(評価:★5)

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