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[コメント] アイアンマン2(2010/米)

ジョン・ファヴローの演出力は前作を凌ぐ。人間関係を柔軟に捌きつつ、それぞれのキャラクターが独立して振る舞うところが面白い。
shiono

**ネタバレ注意**
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前作の感想にも書いたが、アイアンマンがユニークなのは、その正体が世間に知られた公人であるところだ。序盤の上院軍事委員会のシーンは、『ロボコップ』をオマージュしたかのようなニュース映像を織り交ぜつつ、サム・ロックウェルやドン・チードルが顔を揃えて嬉しくなる。スターン上院議員を演じたギャリー・シャンドリングもチャーミングだ。

裏表がないはずのダウニーJrの唯一の秘密が、パラジウム中毒による死の恐怖である。このことを相談できる相手がいないのが彼の性格的な特徴である。自ら胸襟を開く人物ではないのだ。その心の陰を解く鍵は父親にある。というような物語の骨格はあくまで下敷きでしかなく、むやみに感情を掻き立てない演出が優れている。

最も濃いキャラであるミッキー・ロークはその志村喬のようなルックスだけで存在すればよく(鳥へのこだわりは『終身犯』か?)、パルトロウとチードルだけがダウニーJrの友人といえるが、その信頼関係も脆弱だ。ヨハンソンは綺麗に撮れているが、慎ましく脇役に留まっていて、各人のキャラ立ちだけを見ればあっさり腹八分目といったところか。

この映画の魅力は複数の役者が絡む芝居なので、イベント重視のアクション映画ファンからすれば地味なシーンが続くように思えるかもしれない。アメコミヒーローものの中には青春ドラマの側面を持つものも少なくはないが、本作の演出の持ち味はその成熟さである。皆、揃って大人である。かといってとりわけ性的でもないところが興味深い。

アイアンマンの人間関係は社交的であり、その芝居の質は政治劇である。ファヴローの興味は俳優なので、皮膚感覚が伴うアクション演出も上出来だ。

(評価:★4)

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