[コメント] 悪人(2010/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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確かにこの映画の深津絵里さんはすごいと思う。
外国で女優賞をゲットできるだけの素養と能力を発揮していると思いますね。
素晴らしい女優さんです。
比較的に地味な印象のある女優さんです。
でも『踊る大捜査線』で一躍派手な印象をもたらしますが、彼女の本質はきっと『阿修羅のごとく』の三女役だったりするんだと思うんです。
その彼女がこの映画で、女性としての魅力を極力消しつつも、妻夫木聡さんとの関係だけで大人の女性を演じる健気さがとても自然で美しかった。
こういう時代だからこそ、「悪」という概念が難しいものになってしまう。だって、この二人はいかにも普通の人たちですよ。そんな二人が「悪人」にされてしまう世の中とはいったい何なんだ!
冒頭に申し上げた通り、映画を鑑賞する側から見ると、この映画の悪人は明らかに岡田将生扮するボンボンと満島ひかり扮する、そのボンボンを好きになって、地味で陰気な妻夫木聡さんを振ってしまう、どうしようもないノー天気な二人だと思います。
しかしですね、その満島ひかりの親(柄本明と宮崎美子)がそんなアホな娘に育てた責任があるのではないか?という疑問にゆきつきます。
反面、妻夫木聡さんのサイドからすると、彼の境遇、つまり祖母に育てられたというハンデ(あるいは母親に捨てられたというハンデ)を克服しようと生きてきたにもかかわらず、どうにもならずに人(満島ひかり)を殺してしまうこの現実。
この複雑な悪を誰に転嫁すれば、すっきりするんでしょうね。
すっきりしないのがこの映画の主題だと思いますので、後半の灯台で彷徨う深津絵里さんと妻夫木聡さんの光景を見せられると、観客はとことんやりきれない思いに至るんですよね。悲しいですね。
悪はもはや「普通」になりました。
殺された者も殺した者もその周囲にいる人物たちもいずれも本人たちは「悪」を認識していません。
灯台に追い詰められた二人だけが、「悪」をきっかけに結ばれない愛をわかちあうというこの悲劇を誰が非難できるのでしょうか。
救いのない映画だったと思います。
2011/03/05 自宅
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