[コメント] 仁義なき戦い(1973/日)
カメラは建造物を写さない。ただ男たちだけを追いまくる。「パヤヤ〜、パヤヤ〜♪」の下卑てセンセーショナルなトランペットの旋律とともに、過剰な血を吹き上げてあっけなく男たちは死んでゆく。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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菅原文太はヒーローでありながら、同時に大したことはしていない。だが、その瞳に戦後の仁義崩壊劇を焼き付けて歩んでゆく。梅宮が、松方が無為に死んでゆく。その裏にひそむ大したドラマはない。ただあの日、組長の前で盃をあおった若者たちが、常人から任侠界へと足を踏み入れたのが最大のドラマだったのだ。あとは任侠を信ずる者の死と、おのれの欲望だけのための殺しであり、死であった。そしてやくざは腐敗の一途を進むことになる。最初は堅気だった文太だけが、仁義を信じ続けたのが皮肉であった。
それにしても、ドラマを削り落としたがゆえのダイナミズムとはいえ、この物語性の無さは自分には物足りなかった。これがいわゆる「実録もの」の宿命なのだろうが。
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