[コメント] 冷たい熱帯魚(2010/日)
血と乳と肉が濁流となって向かう先は、奇妙に充足した空虚。欲とエゴで皮膚をパンパンに張らせた一種の究極超人のハイテンションの求心力。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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レンジにインスタント食品を次々と放り込んでスイッチを入れる冒頭のシーンが既に暴力性に満ち満ちており、生活そのものが禍々しい嵐を含んでいることが見てとれる。吹越満演じる社本はあの酸鼻な「ボデーを透明にする」作業を目の当たりにする前どころかでんでんのエネルギッシュな悪に触れる前に既に、トイレで苦しげに嘔吐していた。画面に挿入される日時表示は実録風の雰囲気を演出しているつもりなのだろうか。むしろ、社本が覚醒していくシーンでの秒単位で進む表示が、冒頭シーンから継続されていた速度が更に加速する様を露わにするためだけの仕掛けであったかにも思える。
でんでんの父の話や、死に際の「お父さんごめんなさい」には「あぁまたこのテの話か」とバカらしくなり、『ダークナイト』のジョーカーの高笑いによって一瞬で粉砕してしまいたくもなるのだが、最後に絶命した社本を見下ろした娘が「やっと死にやがった!」と泣きそうな顔で嘲笑する台詞の「やっと」は、先述した「バカらしさ」をも含みこんだ上での言葉だったともとれなくはない。とはいえ、「父」の上にキリスト教的「父」をも重ねるという、屋上屋を架すような執拗さにはやはり呆れてしまうのが正直なところ。
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