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[コメント] 奇跡(2011/日)

大人から見てささいな、あるいは非現実的なことであったとしても、奇跡を起こしてでもかなえたいという願いを抱いている子供の将来は、無限の可能性に満ちているのだ。何故なら奇跡に向かって無心で情熱を注げる子供の純度は、必ずや彼らの未来を担保するからだ。
ぽんしゅう

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







父は長男の航一(前田航基)に言った、「お前にはもっと世界を見て欲しい」と。次男の龍之介(前田旺志郎)は父に尋ねた、「世界ってなに?」と。もちろん、世界とは「現実」のことだ。

誰も知らない』(04)で、是枝裕和は大人によって無防備なまま「現実」のなかに遺棄される子供たちを描いた。彼らの前に突然立ち現れた現実は、子供たちから未来を奪う「現実」だ。子供たちにとっては、いわば閉じられた現実だ。

一方、「奇跡」では航一や龍之介たちは、自らの手で「現実」と向き合うことを選択する。彼らの目の前にある「現実」は、未来への多大な可能性を内包した出発点としての現実なのだ。だからこそ、是枝はここでの「現実」を曖昧でありながらも、未知の魅力を秘めた「世界」と言い換えているのだ。

いささか、やわ過ぎる気もするが、それが大人の優しさというものだ、と思う。

(評価:★5)

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