[コメント] イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ(2010/米=英)
映画を見終った人むけのレビューです。
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ポップアート・ストリートアートというのは不可解な世界である。そもそも、「アート」の基準そのものが門外漢からすればわからないわけで、ピカソの絵(ゲルニカとか)を見て「上手くねーよ、これ」と思った事がある人は少なくないだろう。
本作に出てくるMBW(Mr.BrainWash)の作品群もその意味では全く同じ。画面上にでてくる「作品」で印象に残るもののほとんどがアンディ・ウォーホルの剽窃でしかない。アンディ・ウォーホル自身がキャンベルスープ缶だったり、マリリン・モンローの肖像画のシルクスクリーンで名を挙げた人なので、「わからなさ」という意味では個人的には同根なのだが、その剽窃を「アートでござい」と提示する思考回路は全く理解が出来ない。
しかもそれがバンクシーの「推薦文」効果によって相当な成功をしてしまうという絶望的な現実が提示されるにいたり、アートとは何であるかという根本的な問いが観客のみならず、ポップアート・ストリートアートの担い手にも突きつけられる事になる。その意味で、本作は「暴露」に止まってはいない。その突きつけは本作の監督であるバンクシー自身にも突きつけられているのだから。
と、書いておいてちゃぶ台を返すようだが、この「現象」はバンクシーが仕掛けた「いたずら」である可能性もやはり捨てきれないところが本作の面白さでもある。アートの世界で評価される人と評価されない人の差は何かというのは、担い手の側にも明確な回答が出来ない疑問なのだろう。権威ある人間が勧めれば偽物が本物として扱われてしまう世界の「不健全」さをMBWという「ド素人」を使って提示したと考えるのもスリリングで面白い。
頭を使うドキュメンタリー、是非楽しんでいただきたいと思う。
(2011.8.6 シネマライズ)
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