[コメント] 街の灯(1931/米)
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映画全体の構成を考えると、この映画はいわゆる“中だるみ”を感じる部分があった。基本的にはコメディパートと盲目の少女とのドラマパートを交互に繰り返しているのだが、序盤はコメディパートがとにかく冴える。チャップリンの登場シーン(あそこで寝ているのは面白すぎる!)や、水に何度も落ちるシーン、夜のパーティのシーンなど、爆笑級のシーンが続く。そしてドラマパートでほろり、となる。
だが、中盤以降、ボクシングのシーンなど、序盤のコメディパートに比べると、勢いに欠ける気がしたのだ。ボクシングがチャップリンのフィールドと微妙にずれている気がしたのだ。僕にとって、序盤が面白すぎた。そこが中盤少し飽きてしまった原因だろう。
しかし、見事にそれを覆す“巧さ”がラストシーンにきちんと用意されているからこの映画はすごい。ラストシーンでのチャップリンの笑顔。あれはもう反則の域です! 見事に映画を締めている。終わりよければすべて良し、と思わせる力があの映画にはこる。笑って、泣いて、こういう暖かい気持ちにさせてくれるからこそ、チャップリンの映画は面白い。感情の宝庫だということを再確認できた。
ラストシーンにはさまざまな解釈があるようだが、僕には彼らふたりが一緒になるとは思えないんです。おそらく、チャップリンもそう思っている。けれども、チャップリンは照れながら笑顔を見せる。純粋に彼女の目が見えるようになって良かったという気持ちで笑っているのだと思うのだ。自分のことよりも、彼女のことという他人への思いやり。その優しさがチャップリンらしく、すごく暖かいなと感じた。
『モダン・タイムズ』もそうだが、ハッピーエンドか否かどちらとも解釈できる結末ながら、それでもハッピーエンドの余韻を残してくれる。それがチャップリン映画が持つ暖かさの要因だと思う。
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