[コメント] メランコリア(2011/デンマーク=スウェーデン=仏=独)
なんと狂おしい情念に満ちた映画か。トリアーは自らの思い描く世界を完膚なきまでに具現化してみせた。描かれていることへの好悪は別として、この完成度は認めざるをえない。ワーグナー『トリスタンとイゾルデ』前奏曲の執拗な反復は次第にトリアー版『ヴェニスに死す』とも呼べる圧倒的陶酔、ロマンティシズムへと至る。
いささか乱暴に要約すると本作は、トリアーが「鬱から持ち直した俺の今の心境はこんな感じです」っていう閉じた世界を、小惑星衝突も絡めて壮大な風に描いた一種のハッタリ映画といえる。しかしハッタリはハッタリでもその完成度が凄まじい。
第1部と第2部の対・反復構造の見事さ、ベルイマン作品のような結婚式、2部のSF的終末風景。もっと端的にいえば、絶対に渡れない「橋」やら荒れ狂う自然やら・・・どれもいちいち面白い。一番笑ったのはあの針金の道具。あんな原始的な装置で星の位置測って取り乱してるシャルロット・ゲンズブールなんか滑稽すぎるwラストのぶん投げっぷりもむしろ清々しい。
個人的な苦しみと大宇宙の動きを並行して描きながら、きちんと納得できる映画に仕上げてきたトリアーの演出力はやはり凄い。鑑賞中に5,6人ぐらい出て行ってたし鼾も聞こえてきたけど、俺はこういうハッタリ系映画は大好きです。
ちなみに本作のクライマックスは『トリスタンとイゾルデ』終曲の歌詞にぴたりと合うので、ぜひ照らし合わせてみて下さい。
対訳 ttp://www31.atwiki.jp/oper/pages/52.html
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