[コメント] アーティスト(2011/仏)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
台詞がない分、仕草や動きなどかなり表現は自由に、そして工夫し創造し、新鮮さがあることは間違いない。
しかし一方で、主人公の男優とその妻の感情や関係について十分に語りきれないものが残ったのも確かだ。
また女優の、主人公に対する思いについて、駆け出しの頃のトップスターに対する憧れと、その憧れの人からチャンスと助言をもらった恩義、優れた俳優に対する尊敬、女として男への情愛など、いろんな気持ちが各シーンや物語によって表現されているが、今一つまとまりを欠いたような気がしないでもない。
最初はてっきり新人女優とトップ男優との恋愛ものとして進んでいくのかと思ったが、そう単純な話にはしなかったし、男優には妻がいて、新人女優の態度も基本は敬意を土台としたもので好ましさもある。ただ、そういうものが一体的に表現できていたかとなるとどうだろうかな、という気がする。
だからこれを見ると、この現代において無声映画で撮るからこそ表現できることがあるという新鮮さの一方で、他方では無声映画がトーキーに駆逐されていった理由もよくわかる。
無声映画だからこそという表現方法は間違いなくあるが、そうであってもトーキーの方がはるかに多くの表現方法が可能だということは動かしがたい事実でもある。さらに言えば、観客にとっては鑑賞中に頭をつかって想像しなくても、黙ってスクリーンを眺めていれば楽しめるという手軽さもトーキーは提供しているのだ。
ストーリー的にはチャップリンの『ライムライト』を連想しなくもないが、『ライムライト』から60年を経て製作された本作は、無声映画からトーキーへという映画界の一大転換をかなり冷静に見つめているような気もする。だから本作と『ライムライト』を比較するのはお門違いになるのだろう。
あと、どう考えても本作はあの犬抜きにはあり得ないだろう。これだけ活躍した犬が出てくるとなると、アカデミー賞に主演または助演の動物賞が必要になるかも知れんなあ。
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