[コメント] 生きてるものはいないのか(2011/日)
典型的なルサンチマン映画
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
『水の中の八月』でも似たような描写があったが、石井は人がバタバタ死ぬのがよほど好きなのだろう。それで何が描けたのか。出てきたのはスカタンみたいな連中のスカタンな最期の羅列だ。それが一体どうしたというのだ。ブラックユーモアにする技量もなく、『ゾンビ』にする才覚もなく、中途半端に悲惨なばかりだ。
本作の導入部は面白い。特に妊娠騒動の三角関係はいい。サークル仲間の軽薄な会話も悪くない。引っ張れば相当な物語になっただろう。彼等を殺すのは最も安易な解決方法だ。映画にする意味があるのか。
この全滅劇は不治の病に見舞われた田中こなつのルサンチマンの具現化であった訳だ。本作は彼女のルサンチマンの分析に向かわず、その結果だけを詳述している。だから彼女の無知で愚かな精神年齢、つまりそれば制作者のそれと厳密にイコールだが、その身の丈に合ったスカタンしか登場しない。
無理矢理褒めようとすれば、セカイ全滅を夢想する負け組の病を全編ぶちまけた映画、とでも呼べばいいのか。しかしそこに知性の欠片も感じられないのは、負け組を馬鹿にしている。これほど人の死が安っぽい映画はちょっと思い出せない。友達が死んだんだぞ、逃げるなよ。
論理的に、最後まで生き残るのは田中でなくてはならない。彼女はこの結果の責任を全て追うべきである。ラストも外している。最後に叫ばれる言葉の空疎なこと。撮影も黒沢清の足元にも及ばない。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (1 人) | [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。