[コメント] 赤毛のアン グリーンゲーブルズへの道(2010/日)
お話はお馴染みのものであり、しかもアンがグリーンゲイブルズに迎えられる過程のみの作品であって、今公開するのは時期を逸しすぎたとの観が強い。しかし背景美術の井岡雅宏の素晴らしい仕事が、アンの台詞における驚嘆と賛美を充分裏付けるものになっていることが、この作品を現在観る意義を立派に保っている。
言うなれば井岡の画風は後期印象派の画風である。その筆はゴッホに似ており、色使いはシニャックやスーラといった点描の画家たちのそれに似た淡さだ。長らく印象派が絵画の王道と認められていたわが国にとっては、願ってもない筆致であろう。
かく言う自分は印象派よりはマニエリスムなどの写実を好むものであるから、『借りぐらしのアリエッティ』などの深みのほうが今求めているものなのは間違いない。しかし言えることは、この『赤毛のアン』や『アルプスの少女ハイジ』などでの背景へのヨーロッパ系美術の導入なくして、『アリエッティ』はあり得なかったし、ジブリ映画の普遍化も訪れなかった事実である。
この作品は会話劇であり、それだけならアニメとして描く意義はかなり少ない。しかしアン・シャーリーの言葉に嘘を見出せなくなるその一点において、この背景は作品をアニメ映画として成り立たせている。
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