[コメント] ヘルタースケルター(2012/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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そもそも、「もっと綺麗になって幸せに」という欲求を追い求めるのが芸能人というところですでに今さら感が漂う。もはや、このテーマは犯罪者の動機を語る際に使われるなど現実においては「先」に進んでしまっているし、バックステージへの興味という点ではそれをすでに露骨に売り物にしているアイドルグループも存在しているわけで、全方向に対して後れを取っているのが否めない。
また、「自分にないものを持つ後輩に脅かされる」というのも『ブラックスワン』でダーレン・アロノフスキーが見せた境地からすればあまりにも表層的で面白みに欠ける。挙句に劇伴の使い方もひどい。大音量クラシックなんてエヴァンゲリオン以降やられすぎていて、今さら自慢げにそんな演出見せられても失笑する効果しか生まない。
そして、沢尻エリカの勘が戻りきっていないのが、本作が高評価を得るのを難しくしている要因であると思う。長期休養明けであることを踏まえれば、良くやったと言えなくはないが、それでもこのキャラクタが持っている狂気を表現するにはシナリオの練りこみか、人格の落とし込みが足らなかったと思う。監督を同じ蜷川でも蜷川幸雄にしたり、それこそ追い込みに定評のある中島哲也に任せた方が最後の笑顔にしてももっと迫力のあるものができたのではないか。
そんな中でも良いところを探すとすると、脇役全般となるだろうか。大森南朋、桃井かおり、新井浩文、寺島しのぶと達者な人をそろえているのだから当然と言えば当然ではある。それを致命的に殺さなかったことは、ましだったと言えるだろう。
消化不良というか賞味期限切れとも思える題材に挑むのはやはり無理があったのではないか。少なくとも蜷川実花には無理だ。それを提示したことには意義があったと思う。
(2012.7.16 シネプラザサントムーン)
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