[コメント] ローマ法王の休日(2011/伊)
全体的にやや退屈でのんびりした雰囲気だが、教会と法王の権威に真っ向から挑み、否定する、辛辣な映画ではないだろうか。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
そう思ってみるといくつかの演出も意味ありげなものに見える。
劇中、ほとんどの登場人物が、自分で名を名乗ることはあっても他者から名前で呼ばれるシーンが極端に少ない。もちろんみな役名はあるのだがそれが個人の名前としての役目をあまり果たしていない。
字幕を見ているのみなので確信はないが、法王は選出後は「聖下」と呼ばれるだけだし、もっとも優秀だというセラピストの男も「狂言回し」はしてもその名を呼ばれることはなかった。
法王を迎えに行くために大挙として街の小劇場に押し寄せ舞台を台無しにする。そうなってから急に生き生きしだす狂人の役者。
TVの解説者は「法王は神の第一の子であり、最後の子である」と意味深な発言をし、その意味を問われ、絶句し意味はないと謝罪する。(そもそも第一であり最後だというのなら、法王一人のみ、ということだろう)
そしてラスト。「私のために祈ってくれ」と法王らしからぬことを言い出してついに「私には無理だ、できない」と衝撃の告白が飛び出す。それを聞き大げさに顔を覆い失望に打ちのめされる枢機卿たち。
この最後のシーンは、教会と法王という権威が、巨大な重圧で個人をすり潰していく様にも見えた。
のどかでのんびりした空気の中で、とんでもない牙でかみつく映画ではないだろうか。その落差の大きさゆえに極めて刺激的でもあった。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (2 人) | [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。