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[コメント] ホーリー・モーターズ(2012/仏=独)

冒頭で提示されるマレーの連続写真のように、映画の原初的な力を取り戻すこと。カラックスは突発的アクションの可能性に賭けたのだろう。突然犬が現れ、突然髪の毛を齧り、突然楽隊の行進が始まり、突然歌を歌い出す。『ホーリー・モーターズ』にはあらゆる「突然」が詰まっている。
赤い戦車

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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主要登場人物は皆何かしらの「変装」もしくは「演技」をしている。エヴァ・メンデスカイリー・ミノーグがそれぞれ付け鬘であったことが明かされるし、エディット・スコブは最後「仮面」(これは『顔のない眼』への言及でもある)を被って帰宅する。臨終を看取る女性や車から降ろされる少女は「演技」である。

そしてカラックスにしては珍しく、最後で予想外に明確に示される題名「Holy Motors」の意味。13年ぶりの長編は全く衰えておらず、映画愛に満ち、また映画の可能性をますます拡げている力作だ。

しかし、完璧とは思わない。監督の試みはほぼ成功してると思うのだが、要人を暗殺する場面とか結構アイデア先行で満足しちゃってないですか?と感じたりもする。まあ何はともあれ、凄まじいラブシーンの迫力に圧倒され、アコーディオンの旋律に酔い痴れ、ミノーグの歌に泣けばいい。映画の流れにただ身を委ねればいい。難しいことを考える必要は何も無い。

・訳で気になった点が一つ。"Entracte"をインターミッションって訳してたけど、あれはカラックスの意図としては多分ルネ・クレールの「幕間」だろ?あちらも「運動」を描いたという点で共通している。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)chokobo 緑雨[*] セント[*]

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