[コメント] アフター・アース(2013/米)
物語の語り口に強度が足りないのは如何ともしがたい。これはやはり、原案担当のウィル・スミスのための(いや、正確に言えばスミス親子のための)映画であり、ウィル・スミスが息子に語りたい物語、というところに足を引っ張られたのだろう。別に父として息子に語りたいこと(を映画にする)という行為自体は何ら批難されるものじゃあないだろうけど、なんつうんですか、やっぱシャマラン的に遠慮というか気遣いというか、言うなりゃ「顔色見てる」部分が出てきちゃってて、そこらへんが語りの強度を低める結果に繋がってるんじゃないか。
まあ具体的に言えば、アヴァンタイトルで、お、すでに状況が始まっているところからのスタート、短いカットワークでの不親切な説明、いいね! とアゲといてからの、「では、物語の設定をモノローグで説明します」という素人じみた処理。あそこはさー、ちゃんと脚本も書いてるんだからさー、そこはさー、もっといろいろスマートにできるだろうよーという。
いや、別にシャマランの映画に語り口の「強度」を期待しているわけではない。実際のとこ、そこはずっと弱い。いつも綱渡りしてるようだ。でも、その弱さを誤魔化すような、いや誤魔化すなんて言葉が悪いか、その弱さを気にさせないような、語り=騙りの流麗さが確かにあって、私はそこが好きだったのだ(もちろんここで言う「騙り」とは、いわゆる「どんでん返し」のことではないよ)。そこらへんがこの映画には弱い。
物語のテーマ的には確かに今までの作品でもずっと言ってきたことの変奏ないし繰り返しであるし、ベースとして会話主導でストーリーが進行するところもいつものシャマラン節ではあるので、なおさら語り口の弱さというかたどたどしい部分が気になった。ただ、シャマランの名前を無視できるのであれば、大傑作とかではないけれど、普通に楽しく観賞できるSF冒険成長物語ではあるだろう。父親と息子の物語としても、少々時代錯誤に見えるくらいの、古き良き安定したお話です。
(2013/07/04 品川プリンスシネマにて観賞)
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