[コメント] 戦争と一人の女(2012/日)
永瀬正敏が演ずることになる男を、坂口安吾は原作「戦争と一人の女」正・続篇において自画像として書き込んではいない。しかし映画は永瀬に「作家」「映画会社の嘱託」「同人仲間の女性との恋愛」といった安吾の伝記的事実を負わせて、積極的に永瀬=安吾の等式を観客に刷り込もうとする。しゃらくさい。
が、永瀬がほんの一瞬だけ見せる丸眼鏡をかけた容貌は意想外に安吾と似通っていて、思わず面を食らう。だからどうこうというお話にはもちろんならないが。
江口のりこの肢体の魅力のありやなしやについては言及を控えるけれども、根拠不詳の空疎な明朗とでも呼ぶべき性格造型は無気力な『河内カルメン』のようで魅かれるものがある。それは敢えて軽佻気味に奏でられる青山真治/山田勳生の劇伴タンゴとも響き合っているだろう。天皇の話をしたくて辛抱たまらない風の村上淳には閉口する。
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