[コメント] シャニダールの花(2012/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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旧石井聰互時代に『エンジェル・ダスト』で痛い目に合って以来、改名してもまだちょっと敬遠していた石井岳龍。 かつてジャパニーズ・ニューウェイブの急先鋒と言われた彼は、何やらアッチの世界に行っちまったんだよね。ああ、『五条霊戦記』でも痛い目に合ったわ。
ところが今や、私の方がアッチの世界を観たがっている。 いやあ、あの頃は若かったね。現実的な着地点を求めていたんだ。理想的な着地点を観せてくれないから納得できなかったんだ。今『エンジェル・ダスト』を観直したら面白いかなあ?観直す気はないけど。
ところが『シャニダールの花』は、存外真っ当な映画だった。こっちがアッチにイッちゃった世界を観たがっているのに、現実的な理解を得るべく必死に説明してくれちゃうんだ。 個人的にはもっとワケワカンナイ話でよかった。中途半端すぎて、何をしたかったんだか逆にわからない。
この非現実的な設定はとても魅力的だったのだが(それ故観に行ったのだが)、ぼんやり思い返してみると、皆が辛気臭い顔でやたらと「説明」している印象しか残ってない。無菌室みたいな病院内の無機質な会話劇しか思い出せない。 感情をあらわにするのは伊藤歩と山下リオくらいしかいないしね。
若い女性の胸にだけ咲く花、あるいはそれが人の心の発祥だったかもしれないという説、あるいは(これが石井岳龍の本音かもしれない)植物の生命力を盾にとったとった自然回帰論。こういうことを(熱心に)説明するんだけど、物語の面白さと関わってこない。
もしこれが、綾野剛と黒木華ちゃんの恋愛劇なのだとしたら、二人に立ちはだかる障害は「花を育て続けること」ということになるのだが、じゃあ育て続けたらどうなるのかってものを見せてもらえないまま二人でアーダコーダ言ってたところで、観客は「お前らが勝手に決めたルールの中で騒いでるだけじゃん」と思ってしまう。やっぱりね、モンタギュー家とキャピュレット家!とか明確な障害を提示しちゃった方がグダグダ説明いらないんですよ。
一つの手としては、設定以上に凄いものを絵面で叩きつける方法もあったね。 黒木華ちゃんが胸に咲いた花を育て続けた果ての姿がマタンゴみたいになってるとか。
(13.07.21 吉祥寺バウスシアターにて鑑賞)
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