[コメント] 少年(1969/日)
これは、「少年」の姿を借りた、私たち自身の物語だ。私にとっても、そしてきっと他の誰かにとっても。
初期の大島作品にお約束の、日本という国家の仕組みや、権力構造の矛盾を突く試みは、例によってこの作品でもなされている。
この作品で、「権力」の底辺にいるのは少年だ。
まっ白い雪に赤い長靴は、日の丸のメタファーだろう。
しかし、そんな技巧的なことをぬきにしても。
不条理な世界でただひたすらに受難し、突き飛ばされても義母への愛を純粋に信じようとし、ただ一人でもがき苦しむ少年の姿に、涙が溢れてしょうがないのだ。
無表情で悲しみに耐える少年の代わりに、私たちの中にいる「少年」が涙を流す。
これは、「少年」の姿を借りた私たち自身の物語だ。私にとっても。そしてきっとあなたにとっても。
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