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[コメント] 少年(1969/日)

これは、「少年」の姿を借りた、私たち自身の物語だ。私にとっても、そしてきっと他の誰かにとっても。
ピカレスク

初期の大島作品にお約束の、日本という国家の仕組みや、権力構造の矛盾を突く試みは、例によってこの作品でもなされている。

この作品で、「権力」の底辺にいるのは少年だ。

まっ白い雪に赤い長靴は、日の丸のメタファーだろう。

しかし、そんな技巧的なことをぬきにしても。

不条理な世界でただひたすらに受難し、突き飛ばされても義母への愛を純粋に信じようとし、ただ一人でもがき苦しむ少年の姿に、涙が溢れてしょうがないのだ。

無表情で悲しみに耐える少年の代わりに、私たちの中にいる「少年」が涙を流す。

これは、「少年」の姿を借りた私たち自身の物語だ。私にとっても。そしてきっとあなたにとっても。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)寒山拾得 chokobo[*] sawa:38[*]

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