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[コメント] 恋の渦(2013/日)

3つの部屋しか登場しないのに、140分間、テンションが下がらず実に騒がしい映画だ。見事に「こんな奴いるいる」的類型に描き分けられた若者たちの台詞と行動様式に説得力があるからだろう。大騒ぎの割に恋の顛末は意外と古典的なのは「恋は時代を超える」からか。
ぽんしゅう

基本的には台詞のキレに負う会話劇なのだが、おそらく原作の舞台では言葉が劇場空間に拡散して、ここまでのリアルさは観客に伝わらないだろう。大根仁のスクリーンに台詞をつなぎ止めておくための映画的な工夫が、若者たちの「恋の大騒ぎ」を覗き見るようなリアルさを生み「この時代」の映画として記憶に残る作品になっている。

映画的な工夫とは、例えば男の腰パンから覗く下着や、夜なのにサングラスにこだわり手櫛で髪を整える姿であり、小汚いベットやソファに無造作に寝転んだときに身体が作り出す弛緩したカタチのことだ。

あるいは女たちの派手なツケマツゲのタヌキ顔であったり、下着姿でパンティーに手を突っ込んで尻を掻く無防備さや、会話に無遠慮に割り込んでくるケイタイに目をやる姿だったり、拒絶の意思表示の道具となったケイタイを持て余すしぐさのことだ。

そんな、言葉に連動するアクションの細部を丁寧に捉えて「言葉」を画面に定着させる「ながら芝居」にこだわった演出がこの映画の生命になっている。

ところで、今時の若い男の部屋も、あんなにベタベタと女の写真が貼ってあるのだろうか。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)disjunctive[*] けにろん[*]

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