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[コメント] 青天の霹靂(2014/日)

これは単に芸人としてのネームバリューに頼っただけではない、極めて真面目に演出された映画だ。劇団ひとりにはこれからもコンスタントに映画を撮ってほしいと思う。
Sigenoriyuki

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







例えば水浸しになった部屋の電球が不快な音を立てながら突然ぷつんと消えてしまう場面だったり、公園の蛇口から出ていた水が父の死を聞かされてだんだん止まっていく場面では台詞や役者の演技だけに頼らずあくまで映像で人物の心情を語ろうとしている。あるいはビンタやロープで首を絞めるといった行動を反復させそこに差異をもたらすことで状況変化を描写する演出。また、過去にタイムスリップした直後大泉洋が町を駆け回る場面やラストのマジックショーなどは純粋に見ていて気持ちがいい。このマジックショーにおいて始めはブサイクに見えてしょうがなかった大泉洋が、すっかり立派な男になったように見えることがこの映画の演出・脚本が十分成功していることの何よりの証明だろう。

そして見せるだけではなく見せる必要がないものは見せないということも心得ている。吐瀉物を掃除する場面はあっても嘔吐する場面はない。ラストの父との再会では父の顔を見せない(ピントすら送らない)。エピローグもだらだらせずありがとうの一言できっちり終わらせる。96分という簡潔さもこの省略の確かさがあってこそだ。

紙でできた薔薇の比喩だとか病室で未来の話をする場面で天候が雨から晴れに変わっていく演出はちょっとベタすぎるだろうとも思うし、役者の泣き顔を見せることで観客の涙を誘おうとする演出なんかは日本映画の悪しき慣習なのだがここはまあ大目に見ることにしよう。

(評価:★4)

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