本編中において登場人物それぞれが内包する悩みの深さは、お遍路青年がそうであったように、致命的な衝動ギリギリのところを行き交う危ういものである。しかし本作は、そういった危うさをそれ以上表立たせることなく、むしろ心地よいほどの温かさで包んでいく。そこが見事である。

その原動力が、まさにフワフワと、けれど風に耐え、それを糧に大空高く悠然と舞う凧にような福ちゃんというキャラクターであり、それを演じた大島美幸という「役者」であることは明らかだが、その個性を際立たせた曲者ぞろいの脇の妙、これも忘れてはならないポイントだろう。

とにかく力みのなさがよい。そしてそれを象徴する大島の笑顔がよい。またそれを不自然に見せない写真という小道具も効いている。

蛇足かもしれないが、森三中というトリオは、決して大ブレイクしたわけではないけれど、安定した仕事ぶりでお茶の間を安心させてくれている。その意味が少しわかった気もした。