[コメント] 紙の月(2014/日)
贈与の主題は未消化で、あとは警視庁の啓発ビデオ程度。小林vs大島のほうがいっそ面白かったろうに。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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原始社会から日本のお歳暮まで、贈与とは返せという命令だ。不倫相手の大学生は苦しみ、反抗し、退学し、お似合いの彼女を作って去っていく。主人公の行動は独りよがりと断罪される。
もうひとり、かつて贈与を受けたタイ人の少年は、立派に成長した姿を主人公の前に現す。声もかけずに立ち去る主人公は何を思うのか(ここは原作と異なる映画のオリジナルらしい)。ここで名乗り出れば相手を大学生と同じように不幸にする、贈与は匿名でなされるべきだ、シスターが云ったように、神様だけが見ていてくださる、というものだろう。
これに私は全く納得できなかった。贈与の関係にはもっと別の可能性があるはずだ。主人公の後ろ姿には、人との交流の哀しい諦めと背中合わせに、キリスト教徒特有の高慢ちきな自己満足が見える。これに相応しく、全般を通して宮沢の造形は他者への感受性を欠いている。この性格の歪みが少女時代のトラウマのせい、では俗流の精神分析にしかならない。もしそうではないなら、平板なサスペンスや指で消える月などという朦朧な説明など省いて、別に描くべきことがあったはずだ。背景ピンぼけのバストショットの連発は嫌い。ベルベッツのクールな「宿命の女」をウェットな作品の後テーマに使うのは意味不明。
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