[コメント] ワレサ 連帯の男(2013/ポーランド)
(たとえば、ワイヤーの一九七九年作『154』に収録されていてもおかしくなさそうな楽曲であったり、『サンディニスタ!』以降のクラッシュのサウンド・プロダクションを正当に発展させて二〇〇〇年代に活動したポストパンク・リヴァイヴァル・バンドのデッド60sかしらと聴き違えてしまうような楽曲を確認することができます)
さて、著名人の知られざる私生活・家庭生活を掘り起こして物語を組み立てることは伝記映画の典型的な方法論で、むろんそれは映画の品質を保証するものではまったくないが、『ワレサ 連帯の男』はまず夫婦映画として一定の見応えを保つことに成功している。これはいくつかの挿話の力というよりも、ちょっとした台詞回しや表情の機微で夫婦関係を匂い立たせる演出・演技の功績が大きいだろう。ロベルト・ヴィエツキーヴィッチとアグニェシュカ・グロホフスカはともに『ソハの地下水道』で主演級の役どころを演じていたので、すでに日本の映画ファンにも馴染みのある顔だけれども、髭を蓄えたヴィエツキーヴィッチはスーパーマリオのよう、グロホフスカは真木よう子の幸を薄くしたような面立ちで、さらに親しみを深める。
この映画はまた、アンジェイ・ワイダのフィルモグラフィの中でも最も重要な作品群にその身を置くことになるだろう。題材云々ももちろん無視してはならない事柄だが、(前作『菖蒲』の憔悴ぶりが嘘のように)米寿を迎える演出家としては驚異的に若々しい突出を持つシーンがあったことをここでは特に記しておこう。すなわち序盤における労働者たちの暴動やデモ行進がそれで、その空間把握とモブの捌きがシーンから力強く戦争映画的瞬間を掴み取っている。しかもそれは、前線と銃後が溶け合ってしまったかのような、きわめて不吉でスリリングな戦争映画的瞬間だ。
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