映画としての出来は、もっと尖っててほしい、ちょっと丸すぎる、と個人的には思うのですが、話はとても良く出来ていると思います。

北か南のどちらかを持ち上げるわけでも貶めるわけでもない。 思想の是非も問わない。 この話が非難するのは、国家の“制度”であったり“拝金主義”であったり、言わば、思想の“曲解”、あるいは“行き過ぎ”によって生じたものと言ってもいいでしょう。

そしてこの話が訴えるのは、“人間らしさ”という根源的なものなのです。 国の“制度”と“金”で失う“人間らしさ”（隣の韓国家族は、奥さんの浪費癖だけでなく、息子もカツアゲされている）。

それが一気に集約し、爆発するのが、ラストの船上芝居。 いやもう、名シーンですよ。 「一軒家のわりに隣の声がよく聞こえるのね」とか思っていたのですが、ここでこんなに巧く収束できるなら目をつぶりましょう。

(14.10.12 新宿武蔵野館にて鑑賞)