[コメント] 君が生きた証(2014/米)
それにしても歌がいい。ディープな映画だが、歌という柱がしっかりと立っているからラストは不思議な感動に包まれる。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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突然降り注がれた受け入れがたい現実から逃げることしかできなかった父。そんな彼が息子の遺した歌に心奪われたのも、自らが(その形は違えども)どん底と感じる生活に陥っていたからであろう。
両親の離婚後は母親と暮らしていた息子の部屋に置かれていたのは、音楽の楽しさを教えてくれた父との写真であった。彼も本当は父と決して音楽だけに止まらない色々な話がしたかったはずである。しかし父は仕事に明け暮れ、自分のことしか考えられない(最初に住んでいた部屋のような)無機質な毎日を送るだけで、彼の心に触れようとはしていなかった。1人の青年との音楽交流を通して父はそんな自分自身を思い知り、事件後おそらく初めて「現場」へと足を運ぶ。そしてようやく息子と正対するのである。がしかし、時はあまりにも遅すぎた。その後悔と贖罪の念があのとめどなく流れ落ちる涙であったのだろう。
そして父は、それまでのように逃げることなく「息子の歌」を歌う。そのことは未だ決して許されない行為であるのだろう。しかし、彼はそうせずにはいられなかった。なぜならそれだけが彼にとっては息子が生きた証であり、息子の父であった証なのだから。
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これはまた殺人者の親という視点にたった銃社会への警鐘でもある。端役である息子の彼女だった少女を効かせるなど、ウィリアム・H・メイシーも初監督作とは思えない演出の冴えを見せる。
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