[コメント] セッション(2014/米)
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その彼女を袖にしてまで辿り続ける芸の道。芸道ものにはもちろん『春琴抄』のような極端もある訳で、比べればまだ普通、「それがどうした文句があるか」の春団治クラスか。主人公の狂気は単線的で判りやすく、掘り下げるとアラが見えそうだが、だからこその短尺なのだろう。1時間40分余の長さは多分完璧、どんな類のエリート校でもどうしようもなくこういう事態は起こり得るだろうというリアリティが宿されたと思う。アメリカにはああいうジョン・ウェインタイプの教師は多かろうし。
撮影は巧いとは云えず、演奏シーンの管楽器の朝顔のアップの連発など間抜けだし、交通事故は『ノーカントリー』の模倣だがイマイチ。しかしカット割りの細かい話法は内容に合っていていい。音楽は悪くない。そもそもジャズはいろんなタイプのあるジャンルであるから、鋳型にはめて批判するのはどうかと思う。もっとも、アルトマンの『カンサス・シティ』や『スゥイングガールズ』(!)などのような、音楽だけで感動させる力があったとは思わない。
ラストは秀逸。ここで本作の価値はグンとあがった。皮肉な見方もできる(性格判断に使えるだろう)が、私は美しい収束だと受け取って満足した。芸道は突然に達成され、音楽の愉楽が立ち現われ、思わぬ共感がふたりを包み、恩讐の彼方に至ったのだ、と(元教師があれほど喜んでいるのだから、彼の教練の範囲を超えていると取りたい)。元教師を告発したらしい父親が置いてきぼりにされるシニカルが複雑。多分彼女は会場に来なかったのだろう。芸の道は険しい。
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