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[コメント] ラブ&ピース(2015/日)

原爆が愛にかわるまでの話だ。ピカドンと名づけられ、全世界を背負うかのように人の欲望を託されたカメは、東京の街をゆるーく破壊しながら西新宿を目指す。そしてピカドンはラブとなって使命を成就する。エスプリの効いた愛らしくも挑発的なハードファンタジー。
ぽんしゅう

傷つき虐げらえた記憶など忘れてしまったほうがよい。そんなものは「次の繁栄」のため枷でしかない。そう考えることが好しとされる消費社会において、忘れ去ることこそが欲求を具現化するための推進力となるのだ。やがて欲求は欲望となり暴走し始め誰にも止められなくなる。極限まで肥大化した欲望は臨界点を超えれば弾けて消える。そして、また痛い目をみることになる。(昨今話題のカメのような新しい国立競技場のことが頭に浮かぶ!)

すべてのものは、いつか捨てられ忘れ去られる。そこには欲望の果ての繁栄の記憶だけが残り、喪失のショックはなかったことにされる。人はそうすることで次へ進もうとする生きものなのだ。人間の業として永遠にめぐり回り続ける欲望と消費の連環。

園子温は心の復興や復活すら、そんな連環のなかに描こうとする。シニカルだが正しい認識だと思う。だがら主人公の無念と希望を託されピカドン(原爆)と名づけらえたミドリガメは、負を捨て正のパワーのみを純化し「LOVE」の化身となり得たのだ。原爆が愛にかわるとき、人は自分の欲深さに気づき、その愛の大きさにたじろぎ虚空を見上げる。

(評価:★5)

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