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[コメント] キングスマン(2015/英)

斜に構えてると見せかけて王道。王道に陥りそうになると悪ふざけ。他人にはよくわからない監督独自の羞恥心のありようが是か非の分かれ目かも。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







手塚治虫が「物語があまりにガチになると、自分自身がこっぱずかしくなって、そういう時にヒョウタンツギを出す」みたいなことを言ってたけど、あれって「ドラマがちょうど盛り上がるいいところで、手塚治虫はなんでこんなものを急に出してくるの?」とかって思う人っていないのかなぁ? 

本作の、殺戮シーンの悪趣味さとか、救出した王女がお礼にといって「キス?それ以上のことしてあげる」だけで、場面的にOKなのに、わざわざ「ア●ルでやらせてあげる」と言い足すあたりに、この監督のヒョウタンツギ的なものを感じる。「ア●ルでやらせてあげる」ということに実際にプレミアム感があるのかも知れないけど、要するにただふつうのセックスを匂わすだけではまんま007になってしまうから、それが監督にとって恥ずかしいことなのだ、ということなんだと思う。

キック・アス』もおふざけと思わせて王道だったし、マジと照れのバランスが一貫していて、それがちょうど「絶妙」と「不快」のどっちでもあるというあたりがこの監督の特長といってもいいかも知れない。この監督でなかったら、本作の企画はパロディかぬるいオマージュ作品で終わっちゃったんじゃないだろうか? なぜなら目指した初期の007自体が、冷戦時代のル・カレの小説のような王道に対する邪道だったわけだし、中期の007は早くもセルフパロディ化してた産物である。それを元にVFXだけは新しいようなものに寄せて作ってしまいがちな体質の映画監督だったらしょうもない駄作になったように思うのだ。

私は本作の予告編をみて、アクションの撮り方だけが最近のゲーム風なだけで、マイケル・ケインやコリン・ファースの佇まいを見て、『アベンジャーズ』のような、そこそこ感満載のオマージュ作品なのだろうと思い込み、ずっと鑑賞を避けてきたのだけど、かなりのガチでいい意味で裏切られて良かった。特にハリーの映画からの退場のさせ方に監督の本気を感じた。 

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ぽんしゅう[*] けにろん[*]

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