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[コメント] 女の座(1962/日)

(『娘・妻・母』+『乱れる』)×『東京物語』。という無粋な要約からは零れ落ちてしまうこの映画の魅力とは、たとえば男優たち。天才俳優笠智衆はこれぐらいやって当然として、嘘臭い博多弁を操る三橋達也は驚愕的に面白いし、小林桂樹はやっぱり巧い。絶妙に胡散臭い宝田明、伝家の宝刀加東大介も。
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**ネタバレ注意**
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開巻早々ラーメンの出前を嫌がる司葉子の可愛さに悶絶させられた私としてはこれもほとんどオールオッケーと云ってしまいたい映画で、とりわけ三橋・淡路恵子夫妻の「侵略者」ぶりなんて映画のキャラクタとして未曾有の造型ではないか、などと相変わらずいいかげんなことを思ったりもするのだが、成瀬の傑作群が持っているぎりぎりと胸を締めあげるような厳しさには少々欠けるきらいがある。それは「筋」ではなく純粋に「演出」の問題だ。たとえば、確かに高峰秀子の息子が事故死するというのは成瀬映画にあっても有数の悲惨な出来事だが、成瀬は各キャラクタに厳しくフォーカスしていくことよりもフラットな演出を心がけているように見える。それは同時に、「子供の死」さえも巨視的には日常の一齣に過ぎない、という成瀬的残酷の表出でもあるのだが。

 不満があるとすれば、むしろ中北千枝子が出演していないことかしら。むりやり中北をねじ込めるとすれば(年齢的に)草笛光子丹阿弥谷津子の役なのでしょうけど、ふたりともよい働きをしているからなあ。ま、成瀬の映画では不味い配役を見つけるほうが難しいんですけどね。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)ゑぎ[*] 寒山拾得[*] 直人[*]

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