[コメント] 友だちのパパが好き(2015/日)
愛は地球を救わない。ホンモノの愛は惰性を攪乱し、薄ぼけた世界を破壊する。愛とはエゴ。理屈のない意志だ。取扱い危険なのだ。愛人と妻と娘の顛末をみるがいい。薄っぺらな愛がはがされた痕には、不愉快そうな、あるいは表情を失った能面のような顔が現れる。
これは、世のなかに拡散する「生ぬるい愛」へのアンチテーゼだ。「生ぬるい愛」とは、保身のための優しさという自己規制。自己承認欲求に起因する排他的な連帯。現実の抽象化でしかない絆という幻想。不利益から目をそらさせる断定というおせっかいな指針。そんな、無自覚さが打算を容認し、打算が複層し、愛のようなカタチに見えてしまう愛のことだ。
ワンシーケンス、ワンショットの構成に、演劇的臭さや既成の映画にみられるような力みがなく心地よい。状況を示唆し、その場ですべてを語らず、後のシーンでフォローするセリフの導線も上手い。唐突な逆光の踏切シーンの行き着く先のアイディアなど、その好例で秀逸さに思わず唸った。
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