音楽の急なフェードアウトはゴダールか。これもゴダールっぽさを全く隠そうともしないのはどうだろう。名撮影者の初監督作なのだから、普通はもっと気負いのようなものが現れるのではないかと思うのだが。（いや、この透明感も、もしかしたら、かなり気負って仕上げたものかも知れないが。）

　さて、派手なプロット展開はないのだが、各ショットには面白さがいっぱい詰まっている。ほとんどのショットに軽いフック（ひっかかり）があり、クスリとさせられる。黒川芽以と染谷将太の姉弟の自由な感じがとても良いのだが、二人の父親である永瀬正敏と彼のアイスピックが過去と現在を繋いで、一本筋が通っている。何度か出てくる、川にかかった印象的な橋のロケーションも、なかなかいい。あと、パン屋のオジサンが「メルシーボク」と挨拶するのが好き。