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[コメント] 皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ(2015/伊)

米国を中心に時めく、漫画に基礎を置いた超人英雄譚の写実主義風新規解釈。その伊国版と、ひとまず大雑把には云えるだろう。ここでまたぞろ顧みられ、映画史的な意義がいよいよ瞭らかになるのは、かくのごとき後続に道を拓いたM・ナイト・シャマランの二〇〇〇年作『アンブレイカブル』の先見性である。
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人品卑しい犯罪者であったところのクラウディオ・サンタマリアが英雄として覚醒してゆく過程にこの映画の眼目があることは云うまでもなく、これは取り立てて不足のない着実な筆遣いで展開されているが、さらにもう一点の眼目と云うべきは、やはり彼が手に入れた超人性(超人的膂力)の用法だろう。これが人助けやど突き合いにのみ用いられるのではいかにもつまらない。現金自動預け払い機を持ち去るなど、当初は犯罪に活用されるというあたりはキャラクタをよく語った作劇で、道徳的な主人公を持った英雄譚との差別化が積極的に図られたところでもあるが、これだけであればまだ遺漏の気味がある。しかしこの映画は「遊園地」という切り札を備えていた。「イレニア・パストレッリが乗った観覧車を腕ずくで回転させる」といういびつにロマンティックな超人性の発揮ぶりは、たとえばスーパーマンの飛行デート以上に優れた着想であり、ゆえにこの遊園地シーンの数分間こそがこの映画で最も輝かしい時間であると云いたい。

ややもするとサンタマリアの物語より念入りにルカ・マリネッリの物語(組織内/組織間の権力闘争と、肥大化した自己顕示欲の暴走)を語るという視点配分の按配も映画の成功要因だろう。このあたり『アンブレイカブル』に負うところが大きいと思わせる由でもある。また、サンタマリアの傷痍やマリネッリの熱傷などの特殊メイキャップが痛覚の喚起力にかけて秀でていたことも特に記しておく。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)死ぬまでシネマ[*] ペンクロフ[*]

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