[コメント] エル ELLE(2016/仏)
「こういう人もいるだろ!」で世間に挑むバーホーベン
レイプで始まるこの映画、当然レイプが主題なのだろうと思っていたら全然違ってて、イザベル・ユペール演じるきれいなババアと周囲の人々の変態的な欲望を描いた群像コメディのような様相を呈してくるので戸惑ってしまう。
バーホーベンの映画は「らしさ」に頼らず「らしさ」に歯向かうものばかりだ。人体破壊をよくやるのは、人間の外見と中身はこんなに違いますよという作家的表現だ。つまり悪趣味な映画監督だ。多数派の側に立たない彼が撮る映画は、少数者の屈さぬ、多彩な、善悪を超えた生き様を描くものが多い。
レイプ云々以上に、「こういう人もいるだろ!」が主題だったのだ。レイプ被害者がレイプ被害者然としているとは限らない。主人公の性生活はけっこうズブズブで、性的嗜好は独特で、ババアなのにきれいで、映画に登場する誰よりも金を稼ぎ、必要なら人を傷つけることをためらわない。どてらい女なのである。周囲の人々も多かれ少なかれ「普通」から外れている。
ただちょいと困るのが、これがフランス映画であるという点だ。この映画の皆さんはけっこう欲望に忠実な感じなんだけど、それが「普通」を外れた人々には最初見えなくて、まーフランス人ってこんなエロい感じだよな、『エマニエル夫人』もあったしな、などと思ってしまった(偏見)。フランス映画であることで、映画の力はちょっと弱くなったと思う。まーでもイザベル・ユペールが出てくれたから、トントンなのかな。
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