[コメント] ドリーム(2016/米)
思ったより映画的な、ファンをほくそ笑ませる仕掛けが用意されていないコンパクトな出来なのは、これは確信犯的な撮り方なのだろう。コメディ仕立てなのも然り。インテリ層を敢えて外した平易な出来は、本来の意味で正しい反応を呼んでいるようだ。
中流以下の有色人観客がメインターゲットなのだろう。ここでいう「カラード」は有色人種というより「色の濃い」黒人を指すのが原義なのだろうが、しっかり米国でマイノリティとされる我々をも取り込めるエピソード選びの工夫はある。また、真珠のネックレスやハイヒールを強いられることで「よちよち歩き」を演ずるヒロインたちを見れば、ここには被差別者を自任する女子キャリア層の共感も呼ぶことになるだろう。
その上で良心的な白人上司であるケヴィン・コスナーを嫌味なく配置し、キルスティン・ダンストの変節にも共感を持たせるのにも巧さはある。もはや劇中に露骨な人種差別を求める白人観客もいないご時世だが、それでも彼らの内面の傷を癒してくれるキャラの配置は欠かせまい。
そう思うと、かなり創り込まれた映画なのだな、と感じる。皮相的に見るわけではなく、21世紀らしい娯楽映画だ、と感心できたのが本心だ。つまりこのタイトルは実は「アメリカンドリーム」の啓蒙じゃないかとさえ思えるが、これは冗談半分。
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