[コメント] ラブレス(2017/露=仏=独=ベルギー)
これも恐るべき傑作。この厳しい作劇は、キャラクターに対して、と云うよりも、観客に対する厳しさだ。また、カメラの移動と寄り引きが相変わらず見事で一瞬もテンションが弛緩しない。
度々窓が映り、窓から見える風景やしんしんと降る雪、ガラス面の結露といった画面が、冷厳なプロットとフィルムの触感を整合させていく。また、窓外からの視点(窓外へ置いたカメラから撮影された画面)も多くあり驚かされる。いずれも建物の上階の窓外の視点なのだ。この視点転換も、冷徹にキャラクターを突き放す効果があり、ボディーブローのように観客に響く。
本作は前作からまた打って変わって、モスクワの高級マンションに暮らす富裕層を描いているのだが、背景として、森や木立、川辺といった自然のロケーションも上手く取り入れられる。のみならず、森の中の廃墟や、立ち入り禁止地区にある大きなパラボラアンテナといった構造物のスペクタキュラーもこの監督らしい。巨大で無機質な構造物が、人間の無力さを際立たせる、といったことも云えるかもしれないが、もっとシンプルにこの画面が与える名状し難い脅威の感覚こそ映画ではないか。
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