[コメント] 半世界(2019/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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いきなりどうでもいいことを書きますが、キノフィルムズを率いる木下直哉って21世紀の角川春樹じゃないかと思うんです。 思い返せば、阪本順治監督の初期作品は風雲児・荒戸源次郎のプロデュースだった。 ちょっと前は松田優作を世に送り出した名物プロデューサー黒澤満の時期もあったけど、『人類資金』からこっちはキノフィルムズ。 椎井友紀子って人がほぼ全ての阪本順治作品に製作として名を連ねているんだけど、阪本順治と会社を立ち上げて二人三脚でやってきた人なんですってよ。 ちなみにややこしいんだけど、その阪本順治の会社はキノっていう名前なんだけどキノフィルムズとは無関係。もっとややこしいことを言うと、キノフィルムズは木下グループ傘下で代表的な会社は木下工務店なんだけど、その社長でありこの映画の製作総指揮である木下直哉は木下工務店の創業者・木下一族とは無関係の木下さん。
何故こんな話をツラツラ書いたかというと、いやまあ書きたかったからなんですが、なんかこう、この映画が私の好きな阪本順治の集大成のように思えたからなんです。
阪本順治で友情物は珍しいんですが、実は前作『エルネスト』がそうだったんですよ。私は阪本順治の気持ちの中で続編だったんじゃないかと思ったくらい。 なぜ稲垣吾郎だったのかは分かりませんけど、香取慎吾なら2作撮ってる。 自衛隊絡み(『KT』)、世界の問題(『闇の子供たち』)、意外な田舎好き(『大鹿村騒動記』)、そして暴力衝動、ボクシング。いやもう、阪本順治てんこ盛り。
特に、池脇千鶴が電車の中で崩れ落ちた所から怒涛の映画的情景ラッシュ。『北のカナリアたち』でも見せた第4コーナーを回ってから差し切る豪脚。私の好きな阪本順治の力技。
いろんな面で阪本順治らしい映画ですが 実は阪本順治的でない哲学的な映画でもあるように思うのです。
稲垣吾郎と長谷川博己の“二等辺三角形”の物語という前提で話をしますけど、世界を知ってしまった男と世界を知ろうとしない(なんなら我が子のことも知ろうとしない)男の物語。 劇中では「世界と世間」という言い方をして、「世間もまた世界なんだ」という解釈で、どちらに優劣をつけるではなく、それが共存していることが世の中なんだ『半世界』なんだ、という映画なんだと思うんです。
中年男という設定も秀逸で、隠居までは至らないけど、ある程度自分の世界が(限界も含めて)見えてくる年齢だと思うんですよ。 池脇千鶴も「たぶん中高校生の頃は可愛かったんだろうな」「憧れの同級生だったんだろうな」と思わせるに充分な田舎の中年主婦を見事に演じていたと思うんです。
しかし、ジャニーズでなくなった途端にこんなに宣伝してもらえないもんかね。
(19.02.17 TOHOシネマズ新宿にて鑑賞)
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