コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 火口のふたり(2019/日)

この映画、切り返しが少ない。実は、前半は切り返しをあまり意識せずに見ていたので、はっきりしないのだが、柄本佑瀧内公美の二人しか出ない映画であるにも関わらず、少なくも、ラーメン屋のシーンあたりから、会話シーン等で切り返さない。
ゑぎ

 つまり、ツーショットの多い映画だと感じた。例えば、一台カメラで(多くはハンディカメラで)、登場人物間をパンニング主体に見せ、ほとんど切り返しでカットを繋がない、といった演出基調の映画もあるけれど、これは、そういった類いの映画ではない。本作で切り返しを殆どしないのは、二人の関係性を象徴しているのではなかろうか。この演出の極めつけは、後半の、亡霊に扮した人たちのお祭り(西馬音内分踊り、というお祭りとのこと)のシーケンスで、二人が入るワインバーのシーンだ。こゝでのカット割りは、肩なめで二人の背部から撮ったカットを繋ぐのだが、普通は一人ずつのショットで切り返すところを、あくまでもツーショットで繋ぐのだ。あるいは、ラスト、風力発電の風車が並ぶ浜辺で、二人、腰を下ろして会話するシーンのツーショット。

 直截的な二人の関係性の描写では、瀧内が、柄本の作ったハンバーグにあたって寝込んだ後、柄本が介抱する部分がいい。瀧内は、柄本にだけは、全てをさらけ出して臆するところがない、という主旨の発言を後のシーンでするのだが、あゝあのことがそうだよな、と振り返らさせる伏線にもなっている。

 あと、画面として圧巻なのは、タイトルにもなっている、富士山の火口のポスターだ。アルバムの中の写真として登場するだけでも、かなりインパクトがあり、こりゃ良いタイトルだと思ったのだが、もう一度現物を見せられることで、より満足度が高い。映画のタイトルの、画面としての実装というのは、重要なのだ。

#備忘

・ファーストカットは多摩川の大田区側の川べりから撮ったカット。武蔵小杉のビル群が見える。柄本が釣りをしている。ソーセージと黒ラベル。柄本はソーセージ(ウィンナー)好き。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (4 人)ジェフリー少将 [*] 3819695[*] けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。