[コメント] MINAMATA -ミナマタ-(2020/米=英)
NYのシーケンスでは、ライフ誌編集長のビル・ナイがとてもいい。これ畢竟のはまり役じゃないでしょうか。ジョニー・デップと美波が二人で行ったジャズバーのシーンでは、生演奏の体(てい)で、アート・ブレイキーの音源が使われている。こゝは、後の「人生はジャズ」という科白に繋がる場面だが、ちょっと手抜きな感じもする。尚、美波は全編通じてとてもよく演出されている。彼女のセリフの丁寧語とため口のバランスがいい。こなれている。
水俣への導入カットはドローンか?完全なCGか?空撮で海と山。走る鉄道。なんかピカピカした画面で、当時の感覚が出ない。さらに、全編通じて、水俣湾らしいロングショットは皆無。これは寂しい画づくりだと感じた。ただし、土本典昭の『水俣 患者さんとその世界』の美しいロングショットが忘れられない、ワタクシ的な問題ではある。
水俣の場面での登場人物では、浅野忠信は、ほんのワンシーンのみの出演。その妻−岩瀬晶子は、冒頭の入浴シーンの母親なので、浅野も、もう少し出番があってしかるべきではないか。尺の都合でカットされたのではないかといぶかる。加瀬亮は、自身も発病している活動家。いつもカメラを回している。精悍な顔つき、セリフ回しで、好演だ。真田広之は、唐突に活動家として登場し、活動家としてのキャラ以外の人間性の部分は描かれない。よく目立ってはいるが、いびつさを感じる。そしてチッソの社長は國村隼。デップと二人で、工場の高いところに登るシーンでは、超ロングショットが与えられている。これは良いカットだ。ハリー・ライムめいたセリフもあるが、複雑な造型で、ハリウッドらしい完全な悪役、単なる冷血漢、という描かれ方(キャラ造型)ではない、と私には写った(曖昧だが)。あともう一人、足にギブスをした、デップがカメラを与える少年は『うみべの女の子』の青木柚だ。手の指は特殊メイク。彼が良い役(かつ重要な役)で嬉しい(各サイトの出演者リストに加えて欲しい)。
尚、チッソの株主総会がまるで水俣工場で行われたかのような見せ方になっている(実際は、ユージン・スミス来日前に、大阪で行われたものでしょう)。このシーンの中で、真田が、机の上に胡坐で座り、加瀬亮が國村の横にしゃがみこんでる場面があるが、この絵面怖い。脅迫めいている(ヤクザみたい)。また、ユージン・スミスが暴行されるのは、事実は千葉県の工場でのことだが、これも水俣での出来事のように描かれ、効率的な構成に変更されている(映画なのだから、この程度の時間・場所の改変自体はOKと思います)。あと、ラストカットは人物が不自然に静止したカットで、この演出は、ちょっと違和感が残る。
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