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[コメント] ベルファスト(2021/英)

開巻及びラストの町の風景部分はカラー。これがとても綺麗な色遣いだ。1969年への場面転換は、カラーの壁をカメラが上昇移動し、モノクロに転換する趣向。以降、ドラマ部分は基本モノクロだが、映画館で映画を見るシーンなどで、カラーの画面が挿入される。
ゑぎ

 すなわち『恐竜100万年』及び『チキ・チキ・バン・バン』を、家族で見るシーンがある。主人公のバディ少年(および家族)が映画好き、という設定なので(勿論、ケネス・ブラナーがそうだったのだろう)、本作は映画に関する引用の沢山ある映画なのだ。

 例えばバディのお父さん−ジェイミー・ドーナンは、登場時、町の男から、スティーブ・マックィーンと呼ばれる(『大脱走』のマーチをちょこっと口笛で吹く)。あるいは、お母さん−カトリーナ・バルフとお父さんが、道の前でダンスするシーンでは、ジンジャー・ロジャースとフレッド・アステアに喩えたりする。

 また、バディと兄が、テレビで『リバティ・バランスを射った男』を見る場面では、ウェイン、スチュワート、マーヴィン、クリーフのカットが出て来るし、『真昼の決闘』では、クーパーとグレース・ケリーのシーンが映り、町を歩くクーパーの俯瞰カットの後、テックス・リッターによるテーマ曲が、えんえんと流れるのだ。ちなみに、後半の暴動シーンのクライマックスでも、このハイヌーンのテーマ曲がかかるのだが、お父さんとお兄ちゃんの連携プレーは、『リオ・ブラボー』のウェインとリッキー・ネルソンみたいだと思っているのに、よりによって、ハイヌーンかよ、って思ってしまいました。

 さて、主人公のバディは、科白もいいが、表情がよく動いて可愛い。他の子役では、何かとバディをそそのかす従姉も美形だ。あるいは、クラスメイトの女の子との会話も、一言ずつオウム返しのやりとりがいい。しかし、上で書いた通り、バディの両親はとてもハンサムに描かれていて、特にお母さんのバルフは、ほとんどのシーンでミニスカ。また脚が長く、目立つのだ。終盤では、お父さんの歌唱の後、二人でダンスする場面もあり、ちょっと素人とは思えないぐらい二人とも決まっていて、カッコ良く描き過ぎじゃないかと思ったぐらいだ。さらに、お祖父さんのキアラン・ハインズ、お祖母さんジュディ・デンチ、この二人の存在が映画を支えている、といっても良いぐらいの存在感で、これら役者を見ているだけで満足感のある映画だろう。

 あと、ブラナーの主張が、ラストのお父さんの科白で直截的に語られる、という演出は、分かりやすくはあるが、反面、映画における人物造型という意味で、カッコ良過ぎて、私は好みではない(とってつけたようと云うか)。バディがお父さんに、好きなクラスメートと「将来結婚できるかな?」と聞いた後の応答のことを指している。「カトリックでも、ヒンドゥー教でも、南部バプテスト連盟でも、菜食主義の反キリスト者でも」。とても立派な答えだとは思う。

#本作はバスの映画でもある。バスの中で、デンチは『失はれた地平線』を見た話をする。シャングリラ。ベルファストからは行けない。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ぽんしゅう[*] jollyjoker[*]

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