[コメント] 英雄の証明(2021/イラン=仏)
イランの文化にはよくわからないところはあるが、私らのところでは、こういうのを「ドツボにはまる」と言うのだろうなあ。きっかけはいずれも些細なことで、結末も些細なだけに、映画を観ていても他人事は思えない面がある。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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主人公の男の行動は、逡巡や葛藤があったとは言え立派なものである。ただ、その心底に「見栄」のような気持ちがなかったかと言えば、どうだろうか。そして仮にそういう気持ちがあったとしても、それはそんなに非難されるようなことでもないだろう。
また仮釈放みたいな休みがあるとは言え、息子や愛する女性と平穏に暮らしたい、そのためにすがるように必死になった挙句の、ちょっとした出来心のようなものは、誰にでも似たような覚えはあるのではないだろうか。
そして主人公のために、娘の持参金まではたいて(おそらくそのために娘は破談の憂き目にあったのだろう)お金を融通しながら踏み倒された男が、悪感情をいだくのは当然ではあるが、それ以上のものでもなかったのだろう。
そういうありふれた些細な感情が運命に翻弄されていく様は、些細な感情なだけにどこかで、そうこだわらんとすっぱりとあきらめるなり踏ん切りをつけておけば、こんなことにはならなかったのにと思いはするが、いざ自分が同じような目に遭ったら、自分はそんなにものわかりよく、あきらめられるだろうかと思わずにはいられない。
いつか、自分の身にも同じような災難が降りかかるのではないかと思えてしまう、ちょっと怖い映画でもあった。
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