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[コメント] ワン・セカンド 永遠の24フレーム(2020/中国)

父と子、監督とフィルムの物語。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







私は、チャン・イーモウを「失われゆく文化を描く作家」だと思っています。いやまあ、外貨稼ぎの超大作とかも結構あるんだけどね。

彼はしばしば「文化大革命」を舞台にし、「文化大革命で失われた古き良き中国文化」を描写することが多かったと思うんです。もちろんこの映画でも、文化大革命に対する批判的な視点があると思います。でも本作は、「映画」それも「フィルム」そのものを「失われゆく文化」として描いているように思えます。

「フィルム映画を皆で一緒に観る」という文化が失われつつある、という主題。

一方、この映画のストーリーは「父と子の物語」と言えると思います。「親子」ではなく「父と子」。実際この映画で「母親」は出てきませんし、物語上の「母性」も描かれません。なので、「父と子」の関係と「監督と作品」という映画の関係を重ねているように思えるのです。

スクリーンを観て一喜一憂し、一緒に歌う観客の姿。36mm映写機にフィルムをセッティングしたり、フィルムを繋ぐ丹念な描写。

チャン・イーモウが、映画のデジタル化や配信に対してどう思っているかは分かりませんし、この映画を観ても特に否定的な印象は受けません。ただ、「失われていく文化」として「残したい」と思ったことはひしひしと伝わってきます。

(映画が中国共産党のプロパガンダに利用されたことも残したかったのかもしれないけど)

(2022.05.28 TOHOシネマズ錦糸町にて鑑賞)

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] ぽんしゅう[*]

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