あの、建造物の間にロープとかワイヤーを張って、鉄棒をあててぶら下がってシューッとすべり渡るアクションがあるじゃないですか。この映画では2、3回出てくる。この時にワイヤーにあてる鉄棒（自転車のハンドルのようだ）が、どう見てもまっすぐすぎるんですよ。どんな超絶バランスで渡ってるんだよ。この映画への不満はいろいろあるけど、この鉄棒は決定的だと思った。突き詰めれば、適当に作ってると言うしかない。

たとえば『風の谷のナウシカ』でも、ナウシカがガンシップからワイヤーで曳航されるメーヴェに渡る場面がある。この時ナウシカが使う鉄棒はコの字型だった。オレはそれでも大いに不満で、コの字の幅はもっと短く狭くすべきだったと思っている。

このワイヤー渡りは漂流団地というモチーフを着想した最初の最初でやると決めてた見せ場の筈だ。それなのに、なぜこうなってしまうのかがオレには理解できない。このアクションがこの鉄棒で可能かどうか、実際に試すまでもなく少しでも考えればこうはならない筈なのだ。まっすぐな鉄棒を両手でしっかり掴んでいても、渡りはじめるや否や自重で片側に偏り、鉄棒を掴んだ手はワイヤーにこすられてイテテ、アチチ、思わず手を離して海に落ちるだろう。そうならないために鉄棒はコの字或いはくの字でなくてはならない。

まさか鉄棒をコの字或いはくの字に描くことがアニメーション制作のうえで技術的に極めて難しい、予算オーバーしちゃう、アニメーター死んじゃう！　というわけでもあるまい。ハッキリ言ってマジメに観る気をなくしたし、映画のクライマックスのいいかげんさを見るにつけ、やはりマジメに観るには値しない作品であったと言わざるを得ぬ。今回はアニメ力（ぢから）弱かったな。ナツメちゃんはめんこかったけど。