[コメント] もっと超越した所へ。(2022/日)
白米のショットから始まる。キッチンでの女性の後ろ姿。冒頭は、女性4人の顔を隠したショットが繋がれる。スーパーで豚肉を手に取ったり、個室で自製のおにぎりを食べたりする後ろ姿。その中に、アイマスクをして寝ている女性も。
これは4組の男女の話。全編、ほゞ4か所の部屋を舞台とする。3組は、女性の自宅が舞台で、そこに転がり込んでいる男が彼氏。残る1組は女性の職場の個室、男は顧客。屋外シーンは、冒頭の前田敦子と菊池風磨のシーン(下北沢から代田あたり)だけ。加えてカメラが部屋の外に出たのは、伊藤万理華の薬局及び病院でのシーンと、装飾グッズを買うオカモトレイジぐらいか(他にもあったかも知れないが)。趣里と千葉雄大、黒川芽以と三浦貴大には、部屋の外のシーンは無かったと思う。というような室内劇なのだ。
しかし、全編、編集というか、多分、プリプロダクションの段階で既に設計に織り込まれていたのであろう、マッチカッティングが見事で舌を巻くレベルだ。何かの所作、ハグとか、物を置くとかで時空を越えて繋ぐ。あるいは、相似のアングル、例えば人物を横に並べて座らせたショットを複数連打するとか。こういうのを、ホントに無数に繰り出してくる。これにより、映画にリズムを作り、面白さを創出している部分は大きいだろう。私も終盤までは、ずっとニヤケなが見ていた。演者では、特に伊藤万理華とオカモトレイジのやりとりが楽しく、千葉雄大の造型も相変わらず上手いと思った(『子供はわかってあげない』と同じようで、微妙に異なるキャラ造型)。
また、見る前から(トレイラーを見た時点から、かも知れないが)、映画として、どこまで「超越した所」に到達してくれるのか、楽しみにしていたのだが、確かに、ある程度、超越してくれたとも思うけれど、終盤の「もっと超越」シーンは、やっぱり演劇的じゃないか。時間の巻き戻しや空間の越境なんかは、映画でしかできないことかも知れないが、まずもって、4人の女優の絶叫演技が大仰でイヤ。スタジオセットを見せてしまうというメタな造型も、なぜか日本の伝統的な祝祭感も、安っぽいと感じてしまったのだ。
と云うワケで、これはこれで、チャレンジングな映画だとは思いますが、このキャラクター造型で、このマッチカットのセンスで、自然な収束の作品に仕上げてくれていたなら、なかなかの佳作だったのに、というのが見終わった時点の感想だ。
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