[コメント] RRR(2022/インド)
「速い」と「遅い」、映画において面白いのはどちらか。当然「速い」である。速ければ速いほうがよいとまでは云わぬが、大概は遅いより速いほうが面白い。自らが撮った画面にスローモーションの氾濫を許してしまう演出家はそんなことも知らなかったのか。あるいは、まさか、面白さを目指していないのか。
この映画に好意的な人々は上の記述に対して「いかにも暴論である」と憤るかもしらない。だが、たとえば、ナートゥのシーンはまさに「動きが速かったから」面白かったのでないか。仮にダンスの速度をもっと落としたとして、それでもなおあの面白さを保てただろうか。と問うたならば幾許かはご納得を賜われるかしら。
ただし補足的に述べておくと、もちろんこの世のすべてのスローモーションが面白さにとって悪ではない。少数の例外は存在する。代表的なのは『ダージリン急行』までのウェス・アンダーソンだろう。あるスローモーションが面白いか否かは何によって分かたれるのか。『RRR』とウェス・アンダーソンを例に採れば、前者のスローモーションがアクションの「凄さ」を鼻息荒く解説しようとする野暮天の極み、見当違いな親切の押し売り、観客を見下した横柄な節介であるのに対し、後者はアクションの「不思議」「謎」「神秘」を拡大増幅する作用を担っている、と云えるだろう。もっともアンダーソンをもってしても、これを十全に果たすには、ランドール・ポスターと選曲した既成楽曲の力を都度借りる必要があるようだ。
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