[コメント] 春江水暖 しゅんこうすいだん(2019/中国)
まずは、四男(母はラオシャオと呼ぶ)の見合いと、長男の娘グーシーのデートを、公園山上近くからの俯瞰で収めたカット。二組のカップルが別の道(手前と奥)を歩く、それを同一画面に映した縦構図ショットだが、カットを割らずにティルトして、樹齢三百年のクスノキの枝ぶりを見せながら、四男と見合いの相手を再登場させるのだ。さらに続けざまに、グーシーの恋人が、富春江へ飛び込んで、川を泳ぎ続けるシーケンスショット。これは凄い!二百メートルぐらい泳いで岸へたどり着き、三百メートルぐらい岸辺を二人で会話しながら歩くのだが、ずっと、カットを割らずに川側から横移動して見せる(Googleマップで測定しました)。途中で、レトリバー2匹を泳がせている光景が出現したりするのも絶妙だ。これらは、最上のアンゲロプロスのシーケンスショットに匹敵する出来ではないか。良いシーケンスショットとは、画面の中で(あるいは画面外から)、新たな出来事や運動が出現し、複雑な映画の感情を生起させるようなカットだと私は思う。
さて、プロットで一番感動するのは、やっぱり、中秋節に長男夫婦と次男夫婦が蟹を食べている際に、長男の娘グーシー達が、お祝いを持って来る場面ですね。唐突にお祖母さんが割って入る演出がいい。映画はこの唐突さが大事です。嘘っぽさギリギリのバランス感覚なのだ。ちなみに、本作のグーシーは、清潔な美しさが際立っており、彼女の清涼効果は大きい。
終盤になってくると、シーケンスショットにも、もう一歩踏み込みが足りなくなってくる感がするのだけれど、特に、ラスト近く、小舟に寄っていくカットで、もう少し寄り切ってくれていたら、いや、カットを変えても、冷厳な寄りのカットが挿入されていれば、満点をつけたくなったかもしれない。ま、これは私の好みの問題か。四男ラオシャオで閉じるエンディングも好き。傑作。
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